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2018.11.12

続メタボ対策「医食同源~漢方薬はうってつけ??~」

さて、前回のコラムでは「メタボ」のお話から生活習慣、特にその中でも食事習慣の見直し(ロカボ)にまつわるお話をさせてもらいました。 それに加えて皆さんの頑張りをサポートするもう一手?をご紹介したいと思います。

「食」にまつわるところへもう少し踏み込んでいきたいと思います。東洋医学の思想になりますが、体を構成する「元気」は、両親からもらった「先天的な気」と、食べものや飲みものを摂取することで精製される「後天的な気」からできると考えられています。つまり、体の状態に合ったものを食べることは、元気の基本で体の源なんですね。

皆さんは「医食同源」という言葉をご存知でしょうか?聞かれた事はありますよね。上記のように健康の増進のためには医療も食事も本質的に同じで、ともに重要とする考え方です。 実は、「医」や「薬」が食と「同源」という思想は現在の日本の漢方治療においても通じる考え方なのです。桂枝(けいし、シナモン)、生姜、大棗(たいそう、なつめ)、小麦、玄米など日常的な食材が漢方薬の素材になっていることから、薬と食が「同源」であることは疑いありません。

桂皮
桂皮

生姜
生姜

例えば、上記左側の「桂皮」には、独特の香りがあります。京都銘菓の八つ橋やインドティのチャイ、カレースパイスに使われる、肉桂やシナモンのことだと言ったら、思い出す方も多いでしょう。健胃、発汗、解熱などの作用があり、食欲不振や消化不良、感冒、頭痛、発熱などに用いられます。
また右側の「生姜」はショウガ科で、食材としてもおなじみです。半分以上の漢方薬に処方されるほど、使用範囲の広い生薬です。体を温める作用、発汗作用があり、風邪のひき始めなどに利用されます。吐き気や嘔吐にも効果的です。
「陳皮」という生薬もありますが、これも紫蘇の葉ですね。このように様々な食物が漢方生薬として今現在も医療の場で用いられているのです。

では、そこで「メタボ」に対して、一体どのような漢方薬が用いられているのか、見ていきたいと思います。
メタボリックシンドロームへの対処としては、まず食事療法、運動療法、良質な睡眠とストレスの軽減を目的とした生活指導が基本になりますが、この段階で肥満の改善を目的として漢方薬を使用することが出来ます。次いで肥満、糖代謝異常、脂質代謝異常、高血圧はいずれも心血管障害の危険因子であることから、血液の滞りを改善する駆瘀血剤と言われる種類の漢方薬も使用した循環障害の治療も可能です。
出来る事ならば、本格的な生活習慣病へと移行する前に、漢方薬も用いて「未病」の段階で治療することでより快適な日常生活を送ることもできますよ。

具体的な方剤名ですと大柴胡湯防風通聖散桃核承気湯は肥満及びそれに伴う生活習慣病を伴う中高年層に効果的です。また、女性に多い水分代謝の不良が原因の肥満には防己黄耆湯が効果的と言われています。

1. 大柴胡湯
おもに男性の肥満に用いられ、元来骨太・筋肉質の人が、ストレスで飲食過多となり腹が出て固太り、内臓脂肪が多い、ストレスを伴う肥満から高血圧や高脂血症、動脈硬化など生活習慣病を伴う場合に用いられます。

2. 防風通聖散
男女を問わない肥満で脂肪太りや腹がポッコリでる太鼓腹で皮下脂肪が多く、旺盛な食欲による肥満に用いられます。薬理学的にも熱産生促進作用、抗肥満作用、排便促進作用などが認められています。排便促進作用により常用量では下痢や軟便になることがあるため、服用量は適宜調整する必要があります。

3. 桃核承気湯
おもに女性の肥満で肌がくすみ、血行が悪く、冷えのぼせ、便秘傾向の肥満やいわゆるかくれ肥満や固太りに用いられます。また血行を改善、気持ちを落ち着かせ、ホルモンのバランスを整える効果もあるため、のぼせと冷え、肩こり、頭痛、耳鳴り、不安や興奮などの不定愁訴を伴う産後や更年期以降の慢性的な肥満にも効果的です。

4. 防已黄耆湯
皮膚は湿りがちで冷たく、色白でポチャッとした肥満で、水太りや下半身のむくみ、変形性膝関節症でひざに水が溜まるなど下半身や皮膚などの余分な水分の排出を促進することにより肥満を改善します。作用機序として褐色脂肪細胞組織で熱産生促進作用や、レプチン増加による食欲抑制作用などが報告されています。防風通聖散と併用して効果が得られる場合もあります。

循環障害の改善として(駆瘀血剤)

1. 桂枝茯苓丸
駆瘀血剤の代表的な方剤であり、一般に月経に関連する症状の改善に頻用されますが、男女を問わずに瘀血(末梢循環障害)状態が認められれば病名を問わず広く使用されます。糖尿病の合併症はいずれも血管の障害であり、合併症の進展には瘀血状態が大きく関与するため、この改善が必要です。また、最近の研究でインスリン抵抗性の改善効果が認められることがわかってきており、生活習慣病には必須の処方と考えられます。

このように漢方薬も治療に加えることでより症状の緩和や、体質改善につなげることができます。内閣府の「食育に関する意識調査(平成27年)」によると、40-50代男性の約8割がメタボリックシンドロームの予防や改善への「関心」を示しており、7割以上が予防や改善のための食事制限や運動などを「実践」しているようです。こうした健康意識の高まりを背景に、過去30年間増え続けていた男性全体の肥満人口は、2010年には横ばい~減少傾向へと転じました。しかしながら、40代男性に限って言えば、2012年には肥満率が過去最高の36.6%に達し、3人に1人以上が肥満という結果が発表されています。これは、健康に対する地道な努力とは相反して、健康体型を維持することがいかに難しいかということの表れと言えます。一人で立ち向かうのでなく、専門の医療機関や医師に立ち会い、効率的にかつ、先進的に治療を進めていきましょう。また、ご家族のサポートももちろん大事です。今回は漢方薬のご紹介をしましたが、一人ひとりに合った治療方法の組み合わせで皆様に満足いただける診療をさせていただければなと思っています。
当院では生活習慣に関する指導から糖尿病の専門的な治療まで手厚いサポートをお約束いたします。また栄養管理士や糖尿病療養指導士も在籍しており、専門的な治療により早期発見・早期治療に努めております。気になられることはぜひ当院まで気軽にご相談ください。

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