院長コラム

2020.12.10

高齢者の糖尿病⑩~高齢者糖尿病と老年症候群~

   

こんにちは。高齢者の糖尿病についてのコラムも遂に最終回となりました。第10回に渡りご覧くださりありがとうございます。
最終回は、我々医師が高齢糖尿病患者様を診察する際に糖尿病以外にも注意している事についてお話させて頂きたいと思います。

高齢者糖尿病の管理には、生活の質(Quality of Life:QOL) の維持を中心にした、包括的,全人的医療が求められます。そのためには職種を越えたチーム医療が必須となり、特に個人差の大きな高齢者糖尿病においては、その管理を医師だけが行うのではなく、看護師、管理栄養士、薬剤師等のメディカルスタッフや介護職等も携わります。職種ごとの情報にも量的に質的に大きな差が生じやすく、すべての職種がこれらの情報を共有し共通の目標に向かって医療を進めていく必要があります。高齢者は老年症候群をきたしやすいので、薬物治療を行う際には①身体機能、②認知機能、③心理状態、④栄養状態、⑤薬剤、⑥社会・経済状況を包括的に評価する高齢者総合機能評価(Comprehensive geriatric assessment:CGA)を行い種々の対策を立てていきます。

以下に6つの領域の問題とその対策例をまとめておりますのでご覧ください。

CGAに基づいた高齢者糖尿病における対策例

我々医療チームがCGA による評価を行っていくことで、より良い医療や福祉サービスの提供、そしてチーム医療の構築、ADL (日常生活機能)およびQOL(家人も含めた)の向上に加えて、入退院(所)回数や薬の服用数の減少や診断精度の向上などが期待されます。
 本コラムVol.1にも書きましたが、今後の高齢者医療においては、フレイル(高齢者の虚弱)に視点をおきつつ治療を行っていかないといけません。フレイルは筋力低下から起きる「身体的フレイル」という概念のみならず、認知機能の低下やうつから起きる「精神・心理的フレイル」、歯や口の衰えから起きる「オーラルフレイル」、独居や閉じこもりを背景にした「社会的フレイル」などの要素があり、包括的で全人的医療を行っていく上では外せない概念です。我々糖尿病専門医も血糖コントロールだけに視点をおくのではなく、患者様の生活の質の向上とつながりますよう、様々な視点を持ち治療を行って参ります。

当院では生活習慣に関する指導から糖尿病の専門的な治療まで手厚いサポートをお約束いたします。また栄養管理士や糖尿病療養指導士も在籍しており、専門的な治療により早期発見・早期治療に努めております。気になられることはぜひ当院まで気軽にご相談ください。

2020.10.21

高齢者の糖尿病⑨~高齢者糖尿病の低血糖~

   

こんにちは。高齢者の糖尿病についてのコラムもいよいよ残り2回となります。第9回目は高齢者糖尿病の低血糖について見ていきたいと思います。最後までお付き合い宜しくお願い致します。

高齢者は腎機能や肝機能が低下している方が多く、そのような方が血糖を下げる薬を服用すると、薬を排泄・分解する力が弱いために、薬が効きすぎて低血糖になったり、副作用が出たりすることがあります。また、高齢者は低血糖のときに、自律神経症状である「汗をかく」「ドキドキする」「手が震える」等の症状がはっきり出ない場合があります。また、「頭がくらくらする」「目がかすむ」「ろれつが回らない」「元気がない」など低血糖の典型的ではない症状を示すため、低血糖状態が見逃されやすく、結果として重症低血糖を起こしてしまう事があります。スルホニル尿素薬(SU薬)や速効性インスリン分泌促進薬(グリニド薬)を飲まれている方や、インスリン治療を受けらている方は、重症低血糖を起こす可能性があります。又、高齢者のみならずですが、認知機能障害、ADL低下、腎機能障害(eGFR60ml/分/1.73㎡未満)、うつ、BMI低値、無自覚性低血糖の既往を有する方も重症低血糖の高リスクとなります。

低血糖に対する対策をいかに示しますのでご参考下さい。

低血糖の対策

血糖コントロールの目標について主治医とよく相談し、ご自身が自覚されている症状についてよくも伝えましょう。また、食事が十分にとれていない状況や、体調が悪いときに(シックデイ)これらの薬を使い続けると、血糖が下がりすぎることがありますので特に注意が必要です。低血糖にならないようにするための注意点や低血糖になったときの対応方法についても主治医や薬剤師、看護師に確認をとった方がよいでしょう。ご自身の服用しているお薬がわからない方は、一度確認するようにしてください。

当院では生活習慣に関する指導から糖尿病の専門的な治療まで手厚いサポートをお約束いたします。また栄養管理士や糖尿病療養指導士も在籍しており、専門的な治療により早期発見・早期治療に努めております。気になられることはぜひ当院まで気軽にご相談ください。

2020.09.03

高齢者の糖尿病⑧~高齢者糖尿病の薬物使用時の注意点と推奨される使用法~

   

こんにちは。高齢者の糖尿病についてのコラムもついに第8回目となりました。第6回、第7回と実際に使用される薬剤の種類と特徴を見てきましたが、今回は高齢糖尿病患者の治療において注意を要する薬物と推奨される使用法について見ていきたいと思います。最後までお付き合い宜しくお願い致します。

非定型抗精神病薬

代表的な一般名

オランザピン、クエチアピン、クロザピン、アリピプラゾール、リスペリドン

主な副作用

血糖値上昇

推奨される使用法

糖尿病患者に対して、オランザピン、クエチアピンは禁忌、クロザピン、アリピプラゾールは警告、リスペリドン及びその他の非定型抗精神病薬は使用上の注意で慎重投与。

ビグアナイド薬

代表的な一般名

メトホルミン、ブホルミン

主な副作用

嘔気、下痢、乳酸アシドーシス

推奨される使用法

75歳以上の高齢者では慎重に投与する。eGFR30mL/分/1.73m2未満は禁忌。高齢者に対してはブホルミンは禁忌。

DPP-4阻害薬

代表的な一般名

シタグリプチン、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、アログリプチン、リナグリプチン、テネリグリプチン、トレラグリプチン、アナグリプチン、オマリグリプチン

主な副作用

低血糖(SU薬との併用時)、便秘、類天疱瘡、腸閉塞

推奨される使用法

高用量のSU薬と併用する場合は減量する

スルホニル尿素薬(SU薬)

代表的な一般名

アセトヘキサミド、クロルプロパミド、グリクロピラミド、グリベンクラミド、グリクラジド、グリメピリド

主な副作用

低血糖の遷延

推奨される使用法

できるだけ少量で使用する。代替薬としてDPP-4を考慮。eGFR30ml/分/1.73㎡未満は原則使用しない。

SGLT2阻害薬

代表的な一般名

イプラグリフロジン、ダパグリフロジン、ルセオグリフロジン、トホグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン 

主な副作用

低血糖(SU薬との併用時)、脱水、尿路・性器感染症、ケトアシドーシス

推奨される使用法

75歳以上の高齢者や老年症候群を合併した前期高齢者では慎重に投与する。eGFR30mL/分/1.73m2未満は使用を控える。
利尿剤使用の患者では脱水に注意して慎重に投与する。

チアゾリジン薬

代表的な一般名

ピオグリタゾン

主な副作用

浮腫、骨粗鬆症・骨折(女性)、心不全

推奨される使用法

心不全患者、心不全既往者、肝機能障害、膀胱癌患者には使用しない。
高齢者では少量から開始し、慎重に投与する。

α-グルコシダーゼ阻害薬(α-Gl)

代表的な一般名

アカルボース、ボグリボース、ミグリトール

主な副作用

下痢、便秘、放屁、腹満感、肝機能障害

推奨される使用法

腸閉塞などの重篤な副作用に注意する。
開腹術の既往の患者や肝障害の患者では使用を控える。

速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)

代表的な一般名

レパグリニド、ミチグリニド、ナテグリニド

主な副作用

低血糖

推奨される使用法

少量で使用する。ナテグリニドは、透析を必要とするような重篤な腎機能障害のある患者では禁忌。

スライディングスケールによるインスリン投与

代表的な一般名

すべてのインスリン製剤

主な副作用

低血糖

推奨される使用法

高血糖性昏睡を含む急性病態を除き、可能な限り使用を控える。

以上、経口血糖降下薬を安全に服用する為に、一般的な副作用、重大な副作用だけではなく、使用法とその注意を記載しました。主治医とよく相談をしながら薬剤を決めていきましょう。

当院では生活習慣に関する指導から糖尿病の専門的な治療まで手厚いサポートをお約束いたします。また栄養管理士や糖尿病療養指導士も在籍しており、専門的な治療により早期発見・早期治療に努めております。気になられることはぜひ当院まで気軽にご相談ください。

2020.08.03

高齢者の糖尿病⑦~高齢者糖尿病の治療薬と注意点 その2~

   

こんにちは。高齢者の糖尿病についてのコラムの第7回目です。今回は前回に引き続き、薬物治療における治療薬について詳しく見て参りたいと思います。
前回、経口血糖降下薬は1)インスリン抵抗性改善系、2)インスリン分泌促進系の薬剤についてお話しさせて頂きましたので、今回は3)糖吸収・排泄調節系の薬剤である⑥α-グルコシダーゼ阻害薬(α-Gl)、⑦SGLT2阻害薬についてお話しさせて頂きます。最後までどうぞお付き合いください。

⑥α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)

糖尿病患者においては、インスリンの分泌する働きが低下しているために、食後のインスリンの分泌が遅れてしまい、血液中のブドウ糖が速やかに処理できずに血糖が上昇してしまいます。これがいわゆる食後高血糖です。α‐グルコシダーゼ阻害薬は、α‐グルコシダーゼの働きを阻害することで糖質の分解を抑えて、消化・吸収を遅らせることで食後の血糖値の上昇をゆるやかにして、食後高血糖になりにくくします。α‐グルコシダーゼ阻害薬により食後血糖の上昇がゆるやかになると、インスリン分泌の上昇のタイミングが近くなるため、インスリンが効果的に作用できるようになるので食後高血糖が改善します。軽症2型糖尿病で空腹時血糖値がそれほど高くなく、食事療法・運動療法が出来ているのにも関わらず食後高血糖がみられ、インスリン非依存状態を示す場合に用います。中等症以上では併用薬として考慮されます。開腹術の既往の患者や肝障害の患者では使用を控え、放屁、腹部膨満感を来す事があり、腸管気腫症、肝機能障害、腸閉塞などの重篤な副作用にも注意が必要です。

⑥α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)

⑦SGLT2阻害薬
SGLT2阻害薬は、腎臓の近位尿細管でのブドウ糖再吸収を抑制し、尿からの糖分の排泄を促進する新しいお薬です。体重や血圧低下、脂質の改善作用が期待されます。食事・運動療法を行っても十分な血糖コントロールが得られない方、肥満傾向の方などに用いられることが多いです。尿の回数や量が増えることで、脱水症状を引き起こすことがあります。高血圧を合併している患者さんは利尿剤服用による脱水に注意して慎重に投与する必要があります。高齢者でも心血管疾患を合併している患者ではSGLT2阻害薬服用により心不全による死亡減少や腎機能悪化抑制が報告されていますが75歳以上の高齢者や老年症候群を合併した前期高齢者においては慎重投与となっています。SGLT2阻害薬は認知機能や身体機能が保たれた2型糖尿病患者で使用が推奨されます。最近、1型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の使用が認められるようになりましたが、75歳以上の高齢者での安全性は明らかではありません。

又、薬物治療は経口血糖降下薬の他、⑧GLP-1受容体作動薬と⑨インスリン製剤といった注射製剤もあります。インスリン製剤は1型糖尿病、感染症、手術(小手術を除く)、ステロイドホルモン使用の場合や経口血糖降下薬などで血糖コントロールが困難な場合に用いられます。インスリンの注射方法には⑴持効型インスリン1日1回注射、⑵(超)速効型インスリン毎食(直)前1日3回注射、⑶混合型(中間型)インスリン1日2回、⑷強化インスリン療法などの注射方法があります。いずれも血糖自己測定を行い、低血糖に注意しながら使用します。 インスリンの自己注射が困難で注射の十分なサポートが得られない2型糖尿病患者の場合は、⑷強化インスリン療法から⑴1日1回の持続型インスリンまたは⑧週1回のGLP-1受容体作動薬に変更する場合もあります。

注射製剤

⑧GLP-1受容体作動薬

GLP-1受容体作動薬は血糖依存性にインスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制することにより血糖降下作用と体重減少作用を有する注射薬です。嘔気、嘔吐などの消化器症状に注意が必要です週1回の製剤は自己注射が困難な場合、訪問看護などで使用されるケースがあります。冷や汗がでる、気持ちが悪くなる、手足がふるえる、ふらつく、力がぬけた感じがするなど低血糖症状が現れた場合は吸収の速い糖分などを摂取します。

⑨インスリン製剤

1型糖尿病は、インスリンが非常に不足しているか又は全くないため、調整を自然に行うことができません。そこで、1型糖尿病ではインスリン製剤を自己注射することで体の外から補って、健康な人と同じ血糖値の変動パターンに近づけて血糖コントロールを図ります。
自身で出せるインスリンの量や血糖値の状態、からだの状態などに合わせて、使用する製剤や回数、量を決めて行きます。インスリン製剤の打ち方には、いくつかのパターンがあり簡単に図に示します。

インスリン製剤

どの薬が適切かについては、検査等にて測定し主治医が決定致します。血糖値を下げる注射薬の実際の使用方法については、担当の医療スタッフと確認をしてください。

当院では生活習慣に関する指導から糖尿病の専門的な治療まで手厚いサポートをお約束いたします。また栄養管理士や糖尿病療養指導士も在籍しており、専門的な治療により早期発見・早期治療に努めております。気になられることはぜひ当院まで気軽にご相談ください。

2020.06.11

高齢者の糖尿病⑥~高齢者糖尿病の治療薬と注意点 その1~

   

こんにちは。高齢者の糖尿病についてのコラムの第6回目です。今回は薬物治療における治療薬について詳しく見て参りたいと思います。
前回、経口血糖降下薬は作用機序(薬剤がその薬理学的効果を発揮するための特異的な生化学的相互作用)別に、1)インスリン抵抗性改善系、2)インスリン分泌促進系、3)糖吸収・排泄調節系の3つに分類される事をお話しさせて頂きました。まずはそれぞれの種類がどのような特徴を有するか見てみましょう。

1)インスリン抵抗性改善系薬剤

インスリンの働きが悪くなる時に用いられるインスリン抵抗性改善系の薬剤は主に2種類、①ビグアナイド薬と②チアゾリジン薬があります。
肝臓で糖をつくる働きを抑え、筋肉などでのブドウ糖の利用をうながし、血糖値を下げたり、脂肪や筋肉などでインスリンの効きをよくして、血液中のブドウ糖の利用を高めて血糖値を下げます。

2)インスリン分泌促進系薬剤

インスリンの分泌量が少なくなった時に用いられますが、主に3種類③スルホニル尿素(SU)薬、④速効性インスリン分泌促進薬(グリニド薬)、⑤DPP-4阻害薬があります。
作用機序や作用時間も様々で、膵臓のβ細胞に働きかけてインスリン分泌を促したり、インスリンの分泌を促すホルモンであるGLP-1の働きを高めたりして血糖値を低下させます。

3)糖吸収・排泄調節系薬剤

インスリンの働きが悪くなったり量が減ったりしてインスリンの作用が不足すると食後に高血糖を起こしたり空腹時に高血糖を起こしたり致します。これらを改善薬剤は主に2種類⑥α-グルコシダーゼ阻害薬(α-Gl)、⑦SGLT2阻害薬があります。小腸でのブドウ糖の分解・吸収を遅らせたり、尿からの糖分の排泄を促進することで、血糖値の上昇を抑えたり血糖値を低下させたり致します。この様に、作用点や作用機序、作用時間やいつ作用させたいか、又服用する薬剤により発現が懸念される副作用別に薬剤は使い分けられます。種類がたくさんありますので、本回では、1)インスリン抵抗性改善系、2)インスリン分泌促進系について解説致します。それぞれについて詳しく特徴を見ていきましょう。

高齢者糖尿病の治療薬と注意点

①ビグアナイド薬

肝臓では常時ブドウ糖が産生されていますが、乳酸やアミノ酸などのブドウ糖以外の物質からブドウ糖を産生する糖新生により過剰に増える事がありますが、インスリンはブドウ糖が過剰に産生されないように調整をしています。2型糖尿病ではインスリン分泌能の低下やインスリン抵抗性によって、糖新生が過剰になってしまいますが、ビグアナイド薬は、この肝臓で行われている過剰になった糖新生を抑えることで空腹時の血糖値を低下させます。そのほかに、腸でのブドウ糖の吸収を抑えたり、骨格筋などのインスリン感受性を改善してブドウ糖の取り込みを増加させるなどの働きにより、間接的なインスリン抵抗性の改善効果を得ることができ、さらに食後高血糖の改善もするといわれています。肥満とインスリン抵抗性による高インスリン血症がみられる2型糖尿病への使用が最もてきしており、後述するSU薬に比べると血糖値を下げる力は弱いのですが、血糖コントロール改善により体重が増えにくいとされています。なお、肥満でない人に用いても血糖改善効果がみられることもあります。75歳以上の高齢者では慎重投与となりますが、腎機能が保たれていれば使用可能です。eGFRの値が30~60mL/分/1.73m2未満は禁忌であり、ブホルミンは高齢者の服用は禁忌となっております。嘔気、嘔吐などの消化器症状にも注意が必要です。食事摂取ができないようなシックデイの際は中止し無理に服用する必要はありません。又、稀ではありますが、ビタミンB12欠乏にも注意が必要です。

②チアゾリジン薬

インスリンは筋肉(骨格筋)、肝臓、脂肪組織で行われる糖代謝を促進する働きがあり、これらの組織がブドウ糖を取り込んでエネルギーに利用したり、脂肪として蓄えたりすることで血糖の調整をしております。2型糖尿病ではインスリンの分泌の働きが弱まるタイプのほかに、インスリン抵抗性の状態にあるタイプもあります。インスリン抵抗性改善薬は、主に脂肪組織に働きかけて脂肪細胞から分泌されるインスリン抵抗性を引き起こす物質を減少させて、その名の通りインスリン抵抗性を改善することで血糖を下げる薬です。食事療法・運動療法行っているにも関わらず良好な血糖コントロールが得られず、インスリン抵抗性による高血糖がみられる場合に用いられます。また、すでにSU薬などの服薬を行っている場合の併用薬としても用いられることもあります。低血糖を起こす可能性は低いですが、患者さんによっては、むくみや体重が増えることがあります。又、心不全患者、心不全既往者、肝機能障害、膀胱がん患者には使用致しません。女性においては骨折も注意が必要となります。少量から始め慎重に投与していきます。

③スルフォニル尿素薬(SU薬)

2型糖尿病には、インスリンを分泌する働きが弱まって分泌量が少なくなるため、血液中のブドウ糖が処理できずにだぶついた状態(高血糖)のタイプと、インスリンのきき方が悪くなって血液中のブドウ糖が処理できずにだぶついた状態のタイプがありますが、SU薬は、インスリンの分泌する働きが弱まり高血糖を来しているタイプに効果があります。すい臓のランゲルハンス島にあるインスリンを分泌するβ細胞に直接働きかけて分泌を促進し(インスリン分泌刺激作用)、基礎分泌、追加分泌の「量」を増加させることで血糖を下げます。服用後、食事をとらないと低血糖を起こす可能性がありますで必ず食事を摂りましょう。又、低血糖を起こすリスクがありますので少量から使用を開始致します。BMIが低め(肥満でない人)で、食事療法・運動療法を行っているにも関わらず、インスリン基礎分泌量が少ないまま改善せず、空腹時血糖値が高い人などに用います。すい臓でインスリンを分泌出来ても、その分泌量が少ないために良好な血糖コントロールが出来ない場合に、インスリンの分泌を補う目的で用いられます。高齢者における低血糖の症状とその対処法、シックデイのときに、減量・中止することを介護者にも説明が必要です。

④速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)

2型糖尿病では、糖分の摂取後すぐにインスリンを分泌して、血糖を速やかに低下させる働きが低下しているタイプの場合、血糖の上昇とインスリン分泌のタイミングが合わないことがあります。速効型インスリン分泌促進薬は、インスリン分泌のスピードを早めて、食後の血糖の上昇を抑える働きがあります。食後のインスリン分泌量を増加させる作用はSU薬に比べて弱くなっていますが重症低血糖は少ないとされています。比較的軽症の2型糖尿病で、インスリン非依存状態かつ、食事療法・運動療法を行っても十分に血糖が下がらず、食後高血糖がみられる方に、食後高血糖の改善を目的に用います。高度腎機能障害がある場合や高用量で使用する場合には低血糖に注意が必要です。又、1日3回食直前に服用することから服薬アドヒアランスの低下にも注意します。

⑤DPP-4阻害薬

インスリンの分泌をうながすホルモンであるGLP-1の働きを高めます。GLP-1は血液中の血糖の濃度に依存しており、食事をとると小腸から分泌されます。血糖値の上昇に伴ってインスリン分泌が増加するため、単独投与では低血糖になりにくいとされており高齢者には使いやすい薬剤です。また、1日1回服用する薬剤と2回服用する薬剤、週1回服用する薬剤があり、食事の影響がないので食前・食後のどちらの投与でもよいことや、血糖コントロールの改善に伴う体重の増加のリスクが低いことなどが利点として挙げられています。又、腎機能による用量調整を必要する薬剤と必要としない薬剤がある事も高齢者には使いやすい点です。DPP-4阻害薬を高用量のSU薬に併用する場合にはSU薬の減量が必要です。

次回は3)糖吸収・排泄調節系であるα-グルコシダーゼ阻害薬(α-Gl)、SGLT2阻害薬といった経口薬剤だけではなく、1型糖尿病に用いられるGLP-1受容体作動薬とインスリン製剤といった注射製剤についても詳しくお話させて頂きます。

当院では生活習慣に関する指導から糖尿病の専門的な治療まで手厚いサポートをお約束いたします。また栄養管理士や糖尿病療養指導士も在籍しており、専門的な治療により早期発見・早期治療に努めております。気になられることはぜひ当院まで気軽にご相談ください。

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