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2019.07.04

高齢者の糖尿病①~高齢者糖尿病と認知機能、身体機能障害~

   

こんにちは。いつも院長コラムをご愛読いただきありがとうございます。
今回のVol.6号から10回にわたり、高齢者の糖尿病についてお話ししていきたいと思います。ご高齢の方はもちろん、身内の方にご高齢で糖尿病を患ってらっしゃる方の参考になれば幸いです。是非、ご一読下さい。

去る5月24日、日本医師会作成(日本老年医学会協力)「超高齢社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き」の第3弾、「糖尿病」が発行されました。この手引きは多剤併用による薬物有害事象を防ぐための処方の考え方を中心に解説した手引きとなっていますが、第1弾は「安全な薬物療法」、第2弾は「認知症」を取り上げてきました。この第3弾の手引きを見ていきたいと思いますが、75歳以上の高齢者と老年症候群(高齢者に多い医療、介護を要する徴候や症状)を合併した65歳から74歳の前期高齢者を「高齢者糖尿病」と想定し、お話を進めさせて頂きます。

厚労省から発表された平成28年国民健康・栄養調査結果の概要によると、「糖尿病が強く疑われる者」は約1,000万人!と推定され、その中で65歳以上の高齢者が占める割合は約60%以上との推計が出ております。実に日本国民の12人に1人、65歳以上となると5.8人に1人は糖尿病を有している可能性が高い事になります。今後も高齢化が進む事を鑑みるとさらいに糖尿病を患う患者が増加する事が予想されます。
高齢者の糖尿病では、一般的に老化の特徴としての身体機能や認知機能などの個人差が大きくなります。又、合併症やがんなどの併存疾患、社会状況や経済状況によっても重症度が異なってきます。75歳以上の高齢者の糖尿病患者では特に認知機能障害、ADL(日常生活動作)低下などの老年症候群や重症低血糖、脳卒中の合併症などを起こしやすいと言われております。老年症候群は服薬アドヒアランス(患者自身が自分の病気を受け入れて、医師の指示に従って積極的に薬を用いた治療を受けること)低下のような療養上の問題だけでなく、要介護や脂肪の要因にもなり得ます。

高齢者糖尿病の治療は、非高齢者の糖尿病と同様に、血糖、血圧、脂質、体重を包括的に治療し、血管合併症を予防する事が基本となります。又、合併症の進行予防だけでなく、生活機能やQOL(Quality of life:生活の質)の維持・工場を保ちながら、健康寿命を延ばすことが治療の目的となります。更に高齢者糖尿病では老年症候群の悪化予防に努め、患者や介護者の治療の負担を軽減する事も治療の目的となります。

高齢者糖尿病の特徴

上記表1の⑥にもありますが、高齢者の糖尿病患者は認知機能障害、うつ、サルコペニア、フレイル、ADL低下、転倒、低栄養、多剤併用などの老年症候群をきたしやすいことが分かっております。
例えば、糖尿病患者は、糖尿病でない人と比べてアルツハイマー病に約1.5倍、血管性認知症に約2.5倍なりやすいと言われております。又、認知症の一歩手前の状態であるMCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)にもなりやすいと言われております。高血糖や重症低血糖は認知症発症の危険因子である一方で、糖尿病に認知機能障害が合併すると、高血糖になりやすいだけでなく、重症低血糖もきたしやすくなります。
糖尿病おける認知機能障害では記憶力や遂行機能(実行機能)などが障害されやすく、買い物や食事の用意などの手段的ADL低下や服薬アドヒアランスの低下をきたしやすくなります。

記憶障害や手段的ADLの低下、セルフケアのアドヒアランスの低下やうつ傾向、意欲低下がある場合は認知機能障害のスクリーニングを行う事が望ましいです。

ADLは大きく分けて2つあり、①交通機関を使っての外出、買い物、金銭管理、服薬管理などの「手段的ADL」と、②トイレ、食事、移動などの「基本的ADL」とがあります。糖尿病患者は糖尿病でない人と比べて、手段的ADLが1.65倍、基本的ADLが1.82倍低下しやすく、サルコペニアフレイルをきたしやすいと言われております。特に高血糖、身体活動量低下、低栄養がある場合は注意が必要です。

当院では生活習慣に関する指導から糖尿病の専門的な治療まで手厚いサポートをお約束いたします。また栄養管理士や糖尿病療養指導士も在籍しており、専門的な治療により早期発見・早期治療に努めております。気になられることはぜひ当院まで気軽にご相談ください。

2019.04.26

糖尿病と運動・栄養~②食事療法のすすめ~

   

こんにちは。前回、今回と糖尿病の血糖コントロールに影響を及ぼす、運動と栄養についてお話させて頂きます。前回のコラムをご覧頂き、ウォーキングの機会などは増えましたか?ちょっとした心がけで生活習慣は大きく変わります。まずは少しずつからでも始めてみましょう。

今回は食事療法についてみていきましょう。
近年、「カロリー制限が、減量効果や糖尿病の食事療法に有効である」という常識(!?)が否定されつつあります。新たに提唱されていますのが「糖質を制限する」ことですが、最近の糖尿病学会を含め各種学会で糖質を制限する事の必要性に関して色々な知見が示されております。そう言えば、皆さまの身の回りにも「糖質OFF」の食品や飲料が増えてきているような気がしませんか。

血糖値を上げる原因はその名の通り「糖質(≒炭水化物)」ですので、糖質を控えることで、血糖値を下げるインスリンの分泌が抑えられます。糖質制限により糖質は控えますが、反対に三大栄養素のうち、たんぱく質、脂質、食物繊維は血糖値を上げないので、カロリーを気にせずに、これらの食品をたっぷりと摂ることができます

 糖質制限に詳しい江部康二先生は自身の糖尿病の治療として糖質制限食を食事療法として実践され、ダイエットに成功しただけでなく糖尿病も克服されました。江部先生の食事療法はごはんやパン、麺類を控えて、おかずでお腹を満たしたそうです。糖質制限食(ロカボ)については本コラムVol.2を参照下さい。

いわゆる健康な人は食事をした後も必要量のインスリンが分泌され血糖値を正常に保ちますが、糖尿病の人は、食後急激に血糖値が上昇し、なかなか下げられません。それだったら、血糖を上げないような食事にすれば良いのではないか、と言うのが糖質制限食の考え方です。糖尿病は血糖を下げるインスリンと血糖のバランスが狂ってしまう病気です。糖尿病の方やその予備軍の方はいついかなる時も血糖値をコントロールすることが大切です。それは血糖値が良好にコントロール出来ていれば合併症や他の生活習慣病にかかるリスクが低下するからです。

 

以下に糖質制限を行うコツとしての10か条を記します。

又、完全にご飯やパン、麺類を控えるのは難しい場合においても緩やかな糖質制限食(ロカボ)として1食あたりご飯をお茶碗半膳に減らします。食パンなら半分、イモ類は糖質ですので、それを抜いたおかずを多目に食べる事で満足感が得られます。
  ロカボ・ダイエット先進国のアメリカにおいて草分け的存在のバーンスタイン先生は、糖尿病専門医であり、自身のI型糖尿病の治療法を模索する中、糖質を控えることにより血糖値コントロールが良好になることを発見しました。1食あたりの糖質量を43g以下とし、1日130g以下を目標とします。

そして、もう一つ大事な点として、食べる順番も考えるという事が挙げられます。最近の研究では、ご飯を食べる時に、たんぱく質、脂質、食物繊維(野菜)のおかずを一緒に摂ると、ごはんとおかず2品(例:たんぱく質、脂質)、もしくはご飯のみと比べて、食後の血糖値が上がりにくくなることが明らかになっております。

ご飯やパンなどを食べる際は、お肉やお魚、野菜などのおかずをまずは食べてから、最後にご飯やパンを食べると良いでしょう。最初は糖質の少ないおかずをたっぷり食べ、ある程度空腹が満たされれば、ご飯やパンの量が少なくても空腹感は満たされるので、満足頂けると思います。

また、ご飯と一緒に食べるおかずを作ろうと思うと、どうしても味が濃くなってしまいがちですので、おかずだけを食べようと決めて料理をした方が、薄味となり結果的に減塩対策にもなります。

そして、当たり前と言えば当たり前ですが正しい食行動をすることが大切です。1日3食きちんと食べることが大切で、忙しくてもなるべく食事を摂り、まとめ食いは避けましょう。一気に大量に食事を摂ると血糖値の動揺を大きくし肥満になりやすくなってしまいます。早食いも肥満のもとになりますのでゆっくりかんで食べましょう。厚生労働省は「噛ミング30」(カミングサンマル)を提唱していますが、これは一口で30回噛むことを目標にし十分に歯・口を使う「食べ方」を通じて健康の維持増進を図ろうとしているものです。ちなみに、よく噛んで食べる事は2つのメリットにもつながります。まず1つは満腹中枢が刺激され満腹感を得られるので、食べ過ぎを防ぐことができます。これは基本原則の1つ目の食事量を制限し体脂肪率を減らすことにつながりますね。又、よく噛むことで唾液の分泌が促されますので、唾液が口の中の細菌を洗い流し、むし歯や歯周病の予防にも役立ちます。唾液に含まれるアミラーゼという消化酵素がでんぷんを分解し、消化吸収を助けてくれますので味覚も発達してよく味わえるようになります。

糖尿病の食事療法や運動療法は、糖尿病だけではなく、他の生活習慣病の治療や予防のためにも効果があります。皆さん、是非御自分の生活に取り入れて頂ければと思います。

当院では生活習慣に関する指導から糖尿病の専門的な治療まで手厚いサポートをお約束いたします。また栄養管理士や糖尿病療養指導士も在籍しており、専門的な治療により早期発見・早期治療に努めております。気になられることはぜひ当院まで気軽にご相談ください。

 

2018.11.12

糖尿病と運動・栄養~①運動療法のすすめ~

   

こんにちは。前々回前回と、メタボ対策についてご紹介いたしましたが、そのメタボと密接に関連する糖尿病、その対策としての運動と栄養について2回にわたりお話させて頂きたいと思います。今回は特に運動療法についてお話させて頂きますので、普段なかなか運動が出来ていないという方でも、ちょっとしたことからでも結構ですので、始めて頂ければと思います。

メタボ(メタボリックシンドローム)とは内臓肥満(内臓脂肪の蓄積)があり、血圧脂質値血糖値のうち2つ以上に異常を認める症候群のことをさします。
私たちが生きていく為の大切なエネルギー源として、血液中にブドウ糖が存在致します。このブドウ糖がなくては生きていけませんが、多すぎてもよくありません。糖尿病とは、この血液中のブドウ糖(血糖)が多くなる病気のことです。この血液中のブドウ糖の割合を血糖値と呼びます。この血糖値が高くなりすぎてしまう状態が続く事を糖尿病と言いますが、その原因の一つとしてインスリンというホルモンが関与しております。インスリンとは主に肝臓や筋肉、脂肪組織に働きかけ、ブドウ糖を体内に取り込み、体内に蓄え、エネルギー源として使うことができる状態にしてくれるホルモンですが、このインスリンが足りなかったり働きが悪いと糖尿病を発症してしまいます。インスリンの分泌が十分であるのにも関わらず、肝臓や筋肉への糖の取り込みが増えず、肝臓からの糖放出にブレーキがかからなくなり高血糖となってしまう事をインスリン抵抗性と呼びます。インスリン抵抗性はメタボの方に多くみられることから、インスリン抵抗性は、血糖値だけでなく血圧やコレステロール、トリグリセライド(中性脂肪)の代謝にも影響すると考えられております。

近年の日本では糖尿病の患者さんが急速に増え、大きな社会問題となっています。
その原因は、食生活の欧米化にあると言われており、欧米食はカロリーが高く、内臓脂肪が蓄積しやすいのです。内臓脂肪型肥満のうえに運動が不足すると、必要なインスリンは通常の数倍にもなります。しかし、日本人はもともとの体の仕組みとして、欧米人よりもインスリンを分泌する量が少ないのです。つまり、日本人は軽度の肥満でも糖尿病になりやすい民族なのです。
又、糖尿病になる要因には、遺伝的要因だけではありません。現代の生活習慣とも密接に関連しています。皆さまは“食べすぎ”“運動不足”“ストレス”といった生活習慣はありませんか?

遺伝的要因と環境要因としての生活習慣が複数組み合わさり糖尿病になると考えられていますが、実際に糖尿病を患ってしまった場合、治療法としてはまず食事療法運動療法を基本と致します。しかし、それでも改善できない場合は薬物療法を追加して行いますが、まずはしっかりと運動を行い、栄養管理を致しましょう。 
最近の研究では、太っていなくても脂質代謝異常(主にコレステロールや中性脂肪)を生じている人は、筋肉の質が低下していることがわかっております。

筋力が衰える状態を「サルコペニア」と言いますが、体力の低下や活動量が落ち、内臓脂肪が蓄積したりします。筋肉の減少と肥満が重なって起きる「サルコペニア肥満」が近年大変問題になっておりますが、これはサルコペニアを経て、さらに生活機能が全般に衰える「フレイル」となり、要介護状態に至る事は本コラムのVol.1で書きました通りです。
又、筋肉の質の低下は高脂肪の食事なども関連しております。
血糖値を下げるインスリンは、肝臓や骨格筋に作用しますが、肝臓や骨格筋に脂肪が溜まると(脂肪肝や脂肪筋)、溜まった脂肪が毒性を出して、インスリン抵抗性が生じてしまいます。太っていなくても代謝異常の起こりやすい人は、体重の減少に加えて、生活習慣に特に注意を払う必要があるという。
例えば、日常生活の中での活動量を上げるだけでもウォーキングの量が増えます。1駅手前でおりて歩く、1つ2つ上の階であればエレベーターを使わずに階段を上るなど、筋肉に負荷のかかる運動を取り入れて、体力を向上させることが勧められます。

では、具体的に運動療法についてみていきましょう。運動療法のコツは、過度にしんどくなく、おしゃべりができ、汗が少しにじむ程度が理想です。身体の調子が悪かったり、天候がよくない時などは、無理をせずに運動を中止、出来るようになったら又再開しましょう。
糖尿病の運動療法はいつでも、どこでも、無理なく続けられることが大切です。特におすすめなのは、ウォーキング、ジョギング、水泳といった運動です。少し汗ばむ程度の運動量で20分以上、週に3~5回、食後1~2時間に行うと良いでしょう。食後というのもポイントで、血糖値の上昇が抑えられることから、より効果的と言われています。
ちなみに体重60kgの人が、軽い体操や散歩を30分、ウォーキング(速歩)ですと25分、ジョギングで10分前後、水泳(クロール)で5分の運動を行うと100㎉を消費すると言われています。

ウォーキング1日10,000歩を目指してみませんか?
10,000歩というとだいたい1時間20分程度歩くことになります。距離にすると5キロメートル前後でしょうか。1時間20分というと長く感じますが、日常生活でも歩くことを意識して頂ければ、ウォーキングの時間としては1時間も歩けば1日10,000歩は到達すると思います。しかし、いきなり1時間のウォーキングも大変なので、ご近所を散歩する事から始めてみても良いと思います。

運動療法は、糖尿病の様々な症状を改善し、更に動脈硬化の予防などの点からも有効と言われております。しかし、進行した合併症がある場合には、運動する事によって病状を悪化させてしまうこともありますので注意が必要です。運動療法を行う際は、まずは主治医や糖尿病療養指導士、管理栄養士と相談し、自分に合った運動の種類と運動量を決定し、決して無理をせず自分の体と相談しながら適切な運動を続けることが大切です。

当院では生活習慣に関する指導から糖尿病の専門的な治療まで手厚いサポートをお約束いたします。また栄養管理士や糖尿病療養指導士も在籍しており、専門的な治療により早期発見・早期治療に努めております。気になられることはぜひ当院まで気軽にご相談ください。

2018.11.12

続メタボ対策「医食同源~漢方薬はうってつけ??~」

   

さて、前回のコラムでは「メタボ」のお話から生活習慣、特にその中でも食事習慣の見直し(ロカボ)にまつわるお話をさせてもらいました。 それに加えて皆さんの頑張りをサポートするもう一手?をご紹介したいと思います。

「食」にまつわるところへもう少し踏み込んでいきたいと思います。東洋医学の思想になりますが、体を構成する「元気」は、両親からもらった「先天的な気」と、食べものや飲みものを摂取することで精製される「後天的な気」からできると考えられています。つまり、体の状態に合ったものを食べることは、元気の基本で体の源なんですね。

皆さんは「医食同源」という言葉をご存知でしょうか?聞かれた事はありますよね。上記のように健康の増進のためには医療も食事も本質的に同じで、ともに重要とする考え方です。 実は、「医」や「薬」が食と「同源」という思想は現在の日本の漢方治療においても通じる考え方なのです。桂枝(けいし、シナモン)、生姜、大棗(たいそう、なつめ)、小麦、玄米など日常的な食材が漢方薬の素材になっていることから、薬と食が「同源」であることは疑いありません。

桂皮
桂皮

生姜
生姜

例えば、上記左側の「桂皮」には、独特の香りがあります。京都銘菓の八つ橋やインドティのチャイ、カレースパイスに使われる、肉桂やシナモンのことだと言ったら、思い出す方も多いでしょう。健胃、発汗、解熱などの作用があり、食欲不振や消化不良、感冒、頭痛、発熱などに用いられます。
また右側の「生姜」はショウガ科で、食材としてもおなじみです。半分以上の漢方薬に処方されるほど、使用範囲の広い生薬です。体を温める作用、発汗作用があり、風邪のひき始めなどに利用されます。吐き気や嘔吐にも効果的です。
「陳皮」という生薬もありますが、これも紫蘇の葉ですね。このように様々な食物が漢方生薬として今現在も医療の場で用いられているのです。

では、そこで「メタボ」に対して、一体どのような漢方薬が用いられているのか、見ていきたいと思います。
メタボリックシンドロームへの対処としては、まず食事療法、運動療法、良質な睡眠とストレスの軽減を目的とした生活指導が基本になりますが、この段階で肥満の改善を目的として漢方薬を使用することが出来ます。次いで肥満、糖代謝異常、脂質代謝異常、高血圧はいずれも心血管障害の危険因子であることから、血液の滞りを改善する駆瘀血剤と言われる種類の漢方薬も使用した循環障害の治療も可能です。
出来る事ならば、本格的な生活習慣病へと移行する前に、漢方薬も用いて「未病」の段階で治療することでより快適な日常生活を送ることもできますよ。

具体的な方剤名ですと大柴胡湯防風通聖散桃核承気湯は肥満及びそれに伴う生活習慣病を伴う中高年層に効果的です。また、女性に多い水分代謝の不良が原因の肥満には防己黄耆湯が効果的と言われています。

1. 大柴胡湯
おもに男性の肥満に用いられ、元来骨太・筋肉質の人が、ストレスで飲食過多となり腹が出て固太り、内臓脂肪が多い、ストレスを伴う肥満から高血圧や高脂血症、動脈硬化など生活習慣病を伴う場合に用いられます。

2. 防風通聖散
男女を問わない肥満で脂肪太りや腹がポッコリでる太鼓腹で皮下脂肪が多く、旺盛な食欲による肥満に用いられます。薬理学的にも熱産生促進作用、抗肥満作用、排便促進作用などが認められています。排便促進作用により常用量では下痢や軟便になることがあるため、服用量は適宜調整する必要があります。

3. 桃核承気湯
おもに女性の肥満で肌がくすみ、血行が悪く、冷えのぼせ、便秘傾向の肥満やいわゆるかくれ肥満や固太りに用いられます。また血行を改善、気持ちを落ち着かせ、ホルモンのバランスを整える効果もあるため、のぼせと冷え、肩こり、頭痛、耳鳴り、不安や興奮などの不定愁訴を伴う産後や更年期以降の慢性的な肥満にも効果的です。

4. 防已黄耆湯
皮膚は湿りがちで冷たく、色白でポチャッとした肥満で、水太りや下半身のむくみ、変形性膝関節症でひざに水が溜まるなど下半身や皮膚などの余分な水分の排出を促進することにより肥満を改善します。作用機序として褐色脂肪細胞組織で熱産生促進作用や、レプチン増加による食欲抑制作用などが報告されています。防風通聖散と併用して効果が得られる場合もあります。

循環障害の改善として(駆瘀血剤)

1. 桂枝茯苓丸
駆瘀血剤の代表的な方剤であり、一般に月経に関連する症状の改善に頻用されますが、男女を問わずに瘀血(末梢循環障害)状態が認められれば病名を問わず広く使用されます。糖尿病の合併症はいずれも血管の障害であり、合併症の進展には瘀血状態が大きく関与するため、この改善が必要です。また、最近の研究でインスリン抵抗性の改善効果が認められることがわかってきており、生活習慣病には必須の処方と考えられます。

このように漢方薬も治療に加えることでより症状の緩和や、体質改善につなげることができます。内閣府の「食育に関する意識調査(平成27年)」によると、40-50代男性の約8割がメタボリックシンドロームの予防や改善への「関心」を示しており、7割以上が予防や改善のための食事制限や運動などを「実践」しているようです。こうした健康意識の高まりを背景に、過去30年間増え続けていた男性全体の肥満人口は、2010年には横ばい~減少傾向へと転じました。しかしながら、40代男性に限って言えば、2012年には肥満率が過去最高の36.6%に達し、3人に1人以上が肥満という結果が発表されています。これは、健康に対する地道な努力とは相反して、健康体型を維持することがいかに難しいかということの表れと言えます。一人で立ち向かうのでなく、専門の医療機関や医師に立ち会い、効率的にかつ、先進的に治療を進めていきましょう。また、ご家族のサポートももちろん大事です。今回は漢方薬のご紹介をしましたが、一人ひとりに合った治療方法の組み合わせで皆様に満足いただける診療をさせていただければなと思っています。
当院では生活習慣に関する指導から糖尿病の専門的な治療まで手厚いサポートをお約束いたします。また栄養管理士や糖尿病療養指導士も在籍しており、専門的な治療により早期発見・早期治療に努めております。気になられることはぜひ当院まで気軽にご相談ください。

2018.08.30

メタボ対策~キーワードはロカボ??~

   

皆さん最近ロカボという言葉、よく耳にしませんか?いわゆる抵糖質食のことですよね。近年ダイエット食としてブームになっており、メタボの予防食としても位置付けられています。

では、まずメタボ(メタボリックシンドローム)の簡単なおさらいです。簡単に言うと、内臓肥満(内臓脂肪の蓄積)があり、血圧、脂質値、血糖値のうち2つ以上に異常を認める症候群のことなんです。生活習慣病と密接な関係にありますが、肥満の中でも特に内臓脂肪の過剰な蓄積がある“内臓肥満”は、生活習慣病(具体的には、糖尿病や歯周病、ガン、高血圧、肺気腫などです)の発症リスクが非常に高い「メタボ」になっている可能性があります。

何が怖いかというとある日突然倒れてしまったり、寝たきりになってしまうという、恐ろしい病気の前段階でもあるのです。ただ、これは可逆性疾患の一面もあり、早期からの介入治療により予後を大幅に改善しうる可能性が期待あります。

ちなみにこちらが判定基準となります。さあ、チェックしてみましょう。

メタボリックシンドローム診断基準検討委員会:日本内科学会雑誌 94(4):188,2005より改変

 

如何でしょうか。メタボへの対処としては、まず食事療法、運動療法、良質な睡眠とストレスの軽減を目的とした生活指導はやっぱり基本になります。

さあ、そこでロカボの話に戻ります。ダイエットに効果的だという事は周知のことかもしれませんが、糖尿病の予防と改善を目的とした食事療法で、カロリーや脂質の制限はせず、糖質だけを制限する食事療法です。

いまスーパーにどれだけ低糖質食品が並んでいるでしょうか。パン、麺、カレー、クッキー、アイス…挙げればキリがありませんよね。
それだけ皆さんの関心が高く需要が高いことがうかがえます。皆さんはロカボの定義はご存知ですか??

ロカボの定義
1日の総糖質接触量70~130g 基本的に食べてはいけないものはない。
規定の糖質量なら満腹になるまで食べてOK!!

ロカボは低糖質食として括られがちですが、糖質の総摂取量は決められています。日々、意識する必要はあるのですが、中々毎日きっちり糖質量を把握することは、実際は難しいですよね。
ですから自分で大体これくらいが適切な量だと認識しておくことが続けるコツです。

参考までにこちら糖質含有量の表となります。

ただし、もちろん過度なロカボは厳禁です。一切炭水化物を取らない、肉類などの動物性たんぱく質の過剰な摂取は身体への負担もかなり大きいものです。また、ご家族の理解やご家庭の事情もポイントです。例えば育ち盛りのお子さんがおられるとまた状況も変わってくるかもしれませんよね。

如何ですか?もし、こういったダイエット法が継続しにくい方は、まず普段の食生活のバランスを少し見直すことから始められても良いと思います。

食生活の見直しを

バランスのとれた食事とは、「主食」を基本に「主菜」、「副菜」をじょうずに組み合わせた食事のことです。栄養素を気にしすぎてストレスをためては逆効果になることも。外食でもコンビニの食事でも、「主食」、「主菜」、「副菜」をじょうずに組み合わせることで、バランスよい食事を摂ることができるでしょう。また、肥満や脂質異常症、糖尿病などには食物繊維の不足が関係していることがわかっています。食物繊維もしっかり摂ることが大切です。

「食事をする」という行為には、必要な栄養素の補給というだけではなく、嗜好を満足させたり、食材や料理に季節や文化を感じたり、いっしょに食事をする人との会話を楽しんだりするなどいろいろな役割があります。ロカボを始められるのであれば、糖質制限食でも美味しい食品はたくさん存在します、毎日の食事をよりおいしく、そしてこれからの人生も元気で楽しく過ごすためにという目的を忘れないでください。

できることから少しずつコツコツと、焦らず、気長に続けていきましょう。当院には管理栄養士も在中しています。ぜひ気軽にご相談ください。

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