SGLT2阻害薬の特徴とは?糖尿病や心不全の治療に使われる理由と使用の注意点も

SGLT2阻害薬とは?

SGLT2阻害薬(エス・ジー・エル・ティー・ツーそがいやく)とは、体内から糖を排出する手助けをする飲み薬です。もともと、リンゴの皮に含まれる「フロリジン」という成分が尿糖を排出する働きがあることを応用して作られ、日本では2014年から使用が開始されています。

糖の排出を促すはたらきがあるものの、体が必要とする糖は排出せず、きちんと体内に保ってくれることがSGLT2阻害薬の大きな特徴です。また、他の薬と一緒に使わなければ低血糖を起こす可能性が低いというメリットもあります。

 

SGLT2阻害薬の処方に適しているのは「2型糖尿病」

SGLT2阻害薬は、糖尿病のなかでも日本人の糖尿病患者の九割以上を占める「2型糖尿病」に適した薬だといわれています。

特に高血圧症を併発した2型糖尿病は心不全の危険因子となりますが、SGLT2阻害薬は心疾患にも効果的だと注目を浴びているんです。

薬を服用しても問題ないかは、肥満の有無によっても変わります。糖尿病の分類の中でも

  • ①肥満によって、インスリンが分泌されているが機能しない「インスリン抵抗性」タイプ
  • ②肥満ではないが、インスリンを作る力が弱い「インスリン分泌不全」タイ

の2種類が存在します。SGLT2阻害薬は①タイプの方に使われることが多いです。②タイプには合併症のリスクがあるため、慎重に投与します。

SGLT2阻害薬が促す糖の排出量は?

SGLT2阻害薬が促す糖の排出量は一日で約75g。カロリー換算で約300g程度です。

服薬中は体内の糖を輩出するため、体重を減少させる作用もあります。体重減少は患者様の治療のモチベーションにもなり得ますが、BMI22未満のやせ型の方や高齢の方が服用する場合、体重とともに筋肉量の減少を招くことも。処方は慎重に検討した方が良いでしょう。

 

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SGLT2阻害薬が血糖値を下げるメカニズムって?

SGLT2とは、腎臓の近位尿細管というところに存在するタンパク質のこと。

血中から原尿に出たブドウ糖は、SGLT2によって、尿細管に取り込まれて血中へと戻ります。SGLT2阻害薬が血糖値を下げるメカニズムは「尿細管での取り込みを阻止し、そのまま尿としてブドウ糖を排出させること。

他のほとんどの糖尿病治療薬がインスリンの分泌や作用に働きかけるのに対し、SGLT2阻害薬ではインスリンに関係なく、血糖値を下げることが可能です。

SGLT2阻害薬は心不全にも効果がある?

SGLT2阻害薬は糖尿病だけでなく、心不全をはじめとした心疾患にも効果があると注目されています。

なんと「心疾患を持つ方がSGLT2阻害薬を使用すると、死亡や入院のリスクが30パーセント以上低下した」いう研究結果もあるんです。

これは、心臓の筋肉の収縮力を改善する・炎症や線維化を抑える・微小循環を整えるなどの「心保護作用」があるため

SGLT2阻害薬服用した方の心臓病の発生率が時間の経過とともに低下したというデータもあり、昨今では糖尿病でなくても心疾患を持つ方の治療にSGLT2阻害薬を使用する傾向が強まっています。

 

 

 

SGLT2阻害薬の副作用と注意点

尿路・性器への感染症

尿によって糖を体外に排出するメカニズムによって、糖を餌にする雑菌が増え、尿路や性器の感染症を発症することがあります。

外性器のカンジダ膣炎・膀胱炎などの感染症のリスクが上がるため、トイレ後のウォシュレットや入浴時のケアなどを心がけ、デリケートゾーンを清潔に保つことが大切です。

特に女性は尿道が短く、一般的に男性よりも膀胱炎を発症しやすいといわれているため、SGLT2阻害薬の服用中は注意を払う必要があります。

また、まれに腎臓に細菌が感染する腎盂腎炎を発症することもあります。腎盂腎炎は進行すると敗血症など危険な状態を招くこともあるため、早期に適切な治療が必要とされます。寒気、発熱、脇腹の痛みなどが現れた場合には、速やかに当院にご連絡ください

 

脱水症状

薬の服用によって尿の排出が促され、一日の尿量が増えます。体から沢山の水分が排出されてしまうと脱水症状が起きるため、それを防ぐために糖分を含まない水やお茶などの水分を多めに摂ることが大切です。

脱水症状の主な症状は、喉の渇き・倦怠感・尿量の減少など。軽度の脱水症状の場合は、口から経口補水液を投与するだけですが、重度の場合は点滴で水分や電解質を体内に送り込み治療します。

高齢の方は脱水症状に気付きにくいことがあるため、服用中は特に注意が必要です。

その他、生活面では服薬によってトイレに行く回数が増えることが見込まれるため、職場での勤務内容などを含む普段の環境などを考慮して薬が処方されることがあります。

「ケトアシドーシス」という合併症リスクも

ケトアシドーシスとは「ケトン体によって血液が酸性に傾くこと」を指します。

インスリン不足になると、細胞が飢餓状態に陥ります。そうすると、エネルギーとして使用するために脂肪やタンパク質を分解するのですが、その過程で発生するのが「ケトン体」です。

放置し悪化すると、呼吸困難、意識障害に至ることもあります。 SGLT2阻害薬の服用中は、ケトン体が発生しても血糖値が上がりにくいため、これが発見の遅れに繋がります。

全身倦怠感・吐き気・嘔吐・腹痛などのケトアシドーシスが疑われる症状があったときには、たっぷりの水分と30~50gの糖分を摂取し、3~5単位の超速効インスリン追加投与が必要です。

それでも症状が改善しない場合には、すぐに当院にご連絡ください。

日常生活のなかで、軽い風邪症状などの時は通常通り薬を服用して問題ありません。ただ、食事ができないほど体調が悪い時はケトアシドーシスのリスクが高まるため、休薬することが望ましいです。

 

 

SGLT2阻害薬は、血糖降下以外にも効果の高いお薬です

SGLT2阻害薬は、当初糖尿病の治療薬として体内から糖を排出することを目的に開発された薬ですが、近年は心疾患や腎臓疾患など他の病気の治療にも使われており、活躍の場を増やしています。

ケトアシドーシスや脱水などのリスクはあるものの、正しく服用すれば得られるメリットの方が大きいお薬ですよ。

処方についてご不安があれば、ぜひ、当院や処方していただいた病院に相談してみてくださいね。

 

 

 

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